2006年12月12日火曜日

和食味の決め手は出汁(ダシ)にあり

和食はダシによって味わいがきまります。古来先人たちが磨き上げた和食の出汁の素としては、煮干、鰹節、昆布が代表的なものです。こうした食材は、日本の家庭の何処にでもあり日々使われていますが、上手に使うためには少しの知識と心遣いが必要です。これに対し西洋料理では、肉や野菜の煮汁(ブイヨン)がこの役割を果たしているようにも思えます。しかし決定的に違うのは、和風だしの素材そのものが最終調理品にその姿を残さないことです。だしの素は、調理の前段にあってぐらぐらと煮立つ熱湯の中に投入され、頃合をみて跡形も無く取り去られます。甘みエキスだけが鍋に残り、あらためて作り上げる調理品の中に深く浸み渡っていくのです。煮干にしろ、昆布にしろ、取り去られるという調理方法は、和食独自の澄んだ香りと味、彩りを演出する技です。わが国は四方を海原に囲まれています。和食の代表的なだしは、全てこの海原からの恵みです。われわれの祖先は、生活の知恵としてこの海原の中に味のベースを見つけ、里の恵みに彩を添える食文化を完成させました。そういう側面からもわが国は海洋国なのです。

出汁学講座(ダシについて学ぶ)
●第一は 煮干
煮干の原料の多くはカタクチイワシで作ったものが最も一般的です。長崎県が日本最大の生産地となっています。また、マイワシ、ウルメイワシ、キビナゴ、アジ、サバ、トビウオ(あご)などを原料としたものもあり地方の味に深みを与えています。【栄養成分】DHA、EPA、ビタミンB2やD、カルシウムが豊富で、体にいい成分がいっぱいつまっています。
【出汁の取り方】
水出と煮出があり、水出しの方が雑味の少ない良質の出汁が取れます。頭と腹わたからは苦味や雑味が出るので下拵えとして取り除きます。出汁が出やすいように、中骨に沿って2枚下ろしのように指で二つにおります。出汁を取った後に焼け火箸を入れると生臭みの元になっている成分が揮発し、上品な出汁になるといわれています。出汁をとった後の煮干は出し殻として取り出します。
・水出: 1L程度の水に50gほどの煮干を入れて一晩(10時間程度)出汁を取ります。煮干を取り出した後に出汁を加熱して用います。布巾で更に濾す料理人もいます。
・煮出: 1L程度の水に30gほどの煮干を入れて10分程度煮出す。やはり煮干は出汁から取り出します。


●次は鰹節    カツオは縦じま
(尾を持って吊るしてみます)        
鰹節はマガツオを原料にし、煮熟後、焙乾、カビつけを行って仕上げたものです。鰹節といえばイノシン酸、イノシン酸といえば鰹節。そう呼ばれるくらい、今やイノシン酸は、鰹節の代名詞になっています。イノシン酸は大正時代の初め、鰹節のだしの成分を研究する間に抽出分離されました。核酸系の物質のイノシン酸が塩基性アミノ酸のヒスチジンと結びつき、それが鰹節の独特のうま味をつくりだしていると発表したので有名になりました。しかし、鰹節に含まれたイノシン酸の量にかなりばらつきがあり、イノシン酸の量と鰹節のおいしさとは無関係という結論になっています。グルタミン酸のようなうま味アミノ酸に作用して、うま味を発揮することが働きです。イノシン酸はグルタミン酸などのうま味アミノ酸の引き立て役です。
★ 鰹節の作り方(有用なカビを利用した食品です)
 新鮮な鰹を三枚に下ろし、そのうちの二枚を「節」と云い、この節を煮篭に入れて一度煮ます。これを冷まして身を引き締めたものがいわゆる「なまり節」で、なまり節を骨抜きし、底が簀の子になっている木の箱にいれて重ね、下から薪を焚いて、7-10日間燻します。この工程を「焙乾(ばいかん)」と言い、こうすると表面は燻製になりますが、中には未だ水分が残っています。
この後にカビの一種である鰹節菌類(アスペルギルス・ガラウカスやアスペルギルス・レペンス)を表面につけカビを発育させます。こうすると鰹節全体から水分がどんどん失われていきます。このようなカビ付けと熟成を
3-5回程度繰り返し内部を乾燥させて行く訳
です。出しの取り方のコツとしては、少し多い目に使用し、ぐつぐつ煮込みすぎないことです

●最後に昆布寒流で鍛えられる甘みの秘訣昆布の国内生産量は、ほとんどが北海道から採取されており。全体のほぼ95%に相当します。青森、岩手、宮城県の東北3県では5%前後となっています。昆布は暖流の海域では育ちません。昆布は、日本では14属45種あり、全世界では、北半球に26属、南半球に9属生育しています。寒流系の褐藻類である昆布は、日本では宮城県以北の太平洋岸と北海道全域に分布し、とくに北海道が主産地となります。その甘みの秘訣は、昆布のグルタミン酸で、イノシン酸と合わせて食べると『うまみの相乗効果』により、更においしいと強く感じるようです。
ダシの取り方について

上記の写真は、株式会社カネソ22 さんのご了解をもとに掲載いたしました。詳しくは、引用ホームページまでhttp://www.kaneso22.co.jp/dashitori/awasedashi.html1)昆布の表面を、固く絞った布巾でさっとふいてください。(水洗いはしないでください。)2)鍋に水と昆布をいれ、中火にかけてください。3)約10分かけてだしを沸騰させ爪がたつくらいの固さになったら昆布を取り出します4)澄んだ出汁ほど和食には役立つ 注意 長時間昆布を水に浸し、煮てしまうと水の中にぬるぬるした成分や海藻の臭みなどが溶け出し、風味が損なわれてしまいます。火を付けたら気を抜いてはなりません。   三種類の出汁をうまく使い分けましょう、昆布とカツオ、煮干と昆布・・・・忙しいときは瓶詰ダシも上手に使い分けましょう。 ダシひとつ、されどダシは奥深し。

2006年12月1日金曜日

塩辛はいかが

あっという間に秋本番、アフター5といえば外もうっすら暗くなり日本酒の美味しい季節となりました。日本酒といえば和食の肴、わが国には数多くの酒の肴、珍味といわれるものがあります。今回は塩辛について調べてみました。書いていながらもうたまりません。 塩辛の発酵は、魚介類自身の持つタンパク質分解酵素、麹入りの塩辛であれば麹の持つ酵素や細菌類の酵素によって進みます。
これらの酵素の作用でタンパク質は分解されペプチド、アミノ酸(タウリン、アルギニン、プロリンなど)となり、発酵中に乳酸や有機塩基が生成され独特のうま味が醸成されるようになります。
塩辛の細菌叢(フローラ)の研究によればStaphylococcus属(黄色ブドウ球菌以外)で形成されているといわれますが、耐塩菌を考慮した分離方法や嫌気度の研究が十分に行われれば、更に新事実も確認されるのではと思っています。
自分でも作ってみましょう  簡単な塩辛の作り方
①新鮮なイカ(刺身用のイカを使用してください。図1
②まず、胴体はイカの刺身として作ります。イカの塩辛としては耳(外套三角形の部分)と足を使用します。刺身を作る際に内臓(ワタ)を取り外します。図2      

③足から吸盤を包丁の先を使ってはずします。耳と足を適当な大きさと長さに切ります。 
④目の近くは硬いので使わないほうが良いでしょう。 
⑤内臓からワタをスプーンで取り出しイカと合わせ塩を適量小さじ1杯程度加え混ぜます。 
⑥ワタ袋の横に墨袋が見える場合には、入れると黒作りの塩辛になります。 
⑦蓋つきの瓶にいれて蓋をし、冷蔵庫で2-3日程度おけば出来上がりです。 
●作り方に自信が出てきたら、好みに合わせ日本酒や鷹の爪を使い深みを添えてください。
市販品は①塩辛いか②薄塩か
①伝統的な製法にこだわる桃屋さんのお話:「いか塩辛」は昭和27年の発売以来、伝統的製法を維持 しており、保存料を使用せず、常温保存できるように仕上げてあります。生のいかを塩辛として保存するため、塩分は17%です。函館産のスルメイカのみを使用し、じっくりと樽で熟成させ、塩分で素材の旨みを引き出した本格的な「いか塩辛」でお客様の支持をいただいております。・ラベル に「保存料を使用せずに品質を維持するにはこの塩分(約17%)が必要です。主にお茶漬けにてお召し上がり頂き、又、食べ過ぎにはご注意下さい。」と表示してあります。
ご参考ですが、海水の塩分は約3~4%ですので、その5~6倍の塩辛さとなります。上記のように昔からのファンが多数いらっしゃいます。また、伝統的製法を継続、維持して参りますので、ご理解賜りますようお願い申し上げます。とある。(桃屋のホームページ Q&A http://www.momoya.co.jp/ より引用)常温で瓶詰販売するにはこの塩分が必要です。製法にこだわり、味にこだわろうとすれば当然こうした製法となります。
②一方、最近では低塩分嗜好の消費者が増えているため4~7%の新製法の塩辛が多く出回っています。ただし、日持ちが短いので、ほとんどが冷蔵品で防腐剤を使用したり、水分活性を調整し品質を保持しています。確かに塩辛ですが伝統的な塩だけで作りあげる塩辛とは違います。
塩辛を使った料理 
美味しい塩辛はそのままで十分堪能できますが調味料としても熱い視線が注がれています。
①「塩辛の入ったペペロンチーノは、ほんとにおいしいです」
②「塩辛のクリームスパゲティーをよく作るんですけれど、すごくおいしいですよ」まず、フライイパンにオリーブオイルを熱して塩辛をいためます。火がとおったら生クリームをいれるんです。
③「塩辛チャーハンは美味しいんですよ」塩辛の汁が深みのある味付けになります。ラードをキンキンに熱して、そこに塩辛と刻みネギをぶち込んで軽く炒め、ご飯を入れてパラパラに炒めるだけ。全然生臭くないです。
④インスタントで「韓流風味キムチ」が出来上がり。キムチに塩辛を混ぜれば出来上がり。単身赴任者の酒のつまみにどうぞ。⑤「塩辛いため最高です」単品でも野菜と一緒にいためても、よろしいと思います。

①シンプル ②生クリーム ③塩辛入り焼き飯 ④本場韓国の高級キムチは魚介類が入っています。 ⑤オリーブオイルで塩辛を軽くいためます。野菜炒めでも良いでしょう。