2007年2月17日土曜日

寿司という食文化

寿司は和食の中でも代表的なスタイルで、そのヘルシーさから世界的なブームを巻き起こしています。また昨年来、資源保存の観点から寿司ダネとして最とも重要な鮪が中国・韓国のグルメブームに火をつけ品薄、高騰が続きわれわれの楽しみから姿を消す心配が浮上しています。
寿司とはいったい何者なのか、外食産業の市場規模が約26兆円、うち寿司店が約1兆3000億円。更に自動化を取り入れ現代の食環境を変えた回転寿司は、5000億円市場と言われ寿司店全体の売上の3割を占めています。この寿司と世界を一度見直してみることにしました。

寿司はどうして生まれたの
紀元前4世紀頃から既に山岳民族のタンパク質をおぎなう方法として、米の中に塩味をつけた魚を漬けて発酵させた魚肉保存食があったようで、タイ北部(プラ・ソン)や中国南部には、今でも川魚と米を発酵させた食品があります。日本へは平安時代7-8世紀ごろ長江下流域から伝播したと考えらます。室町時代後期には、魚は発酵前で米飯もまだ飯として食べられる内に一緒に食べてしまう形に変わります。寿司は保存食から料理へと変化していきました。


Ⅲ 近世型 
早寿司江戸の元禄時代になると、酢飯を箱につめ、その上に魚介類を乗せて落し蓋をし、上から重しを乗せて数時間後に食べる「箱寿司(押し寿司)」が作られるようになりました。これは「早寿司」と呼ばれました。発酵を待っていられない江戸っ子気質が寿司に酢を絡ませたようです。

Ⅳ 現代型 にぎり寿司
江戸時代の文政年間(1818~1830)江戸では、江戸湾でとれた新鮮な魚(江戸前)を酢飯で握ったご飯にのせたにぎり鮨が中心となり飯に酢を混ぜ、魚だけでなく野菜・乾物などを用いて作るのです。寿司商、華屋与兵衛がわさびによりネタとシャリの味を引き立たせたのが寿司の大ヒットに結びつきました。 そして1923年の関東大震災により、被災した東京の寿司職人達 が故郷に帰り、日本全国に拡がっていったのです。出典: (安藤広重図)フリー百科事典『ウィキペディア』寿司より

高級料理に変身した寿司
寿司は、寿の料理として冠婚の席に祝いの料理として使われることが多く、夫婦で食べることから一品2貫が古来慣わしです。また、会席料理などと同様に心から客を最高にもてなす極地として、最高のネタを探していくと、知れずと高級食材となってしまう様です。 旬、最高の味、希少性、器、時、場所、もてなしの心を整えようとすると大量生産は困難です。食べるものと握るものは板場を境に心を読み合い、競い合うのです。ちょっと窮屈ですが、芸術の域に近づくのですから、値段もいたし方ありませんね。昭和40年ごろまでは、お寿司屋さんはこんな流れを汲んでいましたから、飲食店でも格が高かったのです。勿論、値段も高かった。私なんか親戚の結婚式や祝い事で年に一度寿司屋に連れて行ってもらい、チラシ寿司とカッパ巻きを頼んでもらえば、これ以上のご馳走はありませんでした。最近でも、家内と寿司屋に行きますが、このときは財布覚悟で行きます。食べ盛りだった子供をつれてゆくときには回転寿司が最適です。


回転寿司の到来が外食を変えた
大阪の立ち喰い寿司店経営者、白石義明が、ビール製造のベルトコンベアをヒントに、多数の客の注文を低コストで効率的にさばくことを目的として「コンベヤ旋廻食事台」を考案し、1958年大阪府布施市(現:東大阪市)の近鉄布施駅北口に最初の回転寿司店である「元禄寿司」を開きました。1962年12月6日、「コンベヤ旋廻食事台」は「コンベヤ附調理食台」として白石義明名義で実用新案登録(登録第579776号)されています。事業展開を西日本に限定した白石さんに日参して東日本でのフランチャイズ権を取得した故江川金鐘さんは、後に株式公開のために社名を元禄寿司から平禄寿司とさせてもらい傘下のお店を独立させました。1978年には回転寿司の特許が切れ、全国どこでも回転寿司の経営が可能となります。従来の寿司店の高級化傾向に対し、安さ、手軽さ、会計の明朗さで大衆客のニーズをとらえ、外食の重要な戦略業態となっています。

ぶらりと入った全国のお寿司屋さんです
函館いか祭り(函館市豊川町)/ 海天丸(函館市本通)/まわる寿司花館 (東京都豊島区南池袋)/ 新宿栄寿司 西口京王百貨店前平禄寿司 (宮城県仙台市青葉区一番町)/ がってん寿司 (埼玉県川越市鯨井)寿司銚子丸 (千葉県柏市)/ 海鮮処 寿し常 (埼京線赤羽駅ビル)魚がし日本一 (秋葉原昭和通り口)/ 築地寿司鮮 (4丁目場外市場店)双葉寿司 (静岡県沼津市千本港町)/ たか嶋(静岡県沼津市千本港町)元祖廻る元禄寿司本店 (東大阪市道頓堀)/ 寿司市場 (沖縄県北谷町美浜)


寿司の言葉(基本的に寿司職人の間での符牒:職人さんの用語ですから、ほどほどに) オアイソ お愛想。勘定をの意味。(本来店の人が使うのが正しく、客が使うのは誤り)
 ガリ :甘酢に漬けた薄切りの生姜。語源はその食感、ガリッガリとする歯応えからとの説。
 クサ :海苔のこと。「浅草海苔」の省略という説。
 シャリ :酢飯のこと。仏教語の舎利(飯)、サンスクリット語で米を意味する単語シャーリを語源とする。仏舎利の「舎利」は「肉体」を意味する別の単語で寿司とは無関係。
 ムラサキ :醤油のこと。醤油が高価であったため、高貴な色である紫を当てたと言う説。

2006年12月12日火曜日

和食味の決め手は出汁(ダシ)にあり

和食はダシによって味わいがきまります。古来先人たちが磨き上げた和食の出汁の素としては、煮干、鰹節、昆布が代表的なものです。こうした食材は、日本の家庭の何処にでもあり日々使われていますが、上手に使うためには少しの知識と心遣いが必要です。これに対し西洋料理では、肉や野菜の煮汁(ブイヨン)がこの役割を果たしているようにも思えます。しかし決定的に違うのは、和風だしの素材そのものが最終調理品にその姿を残さないことです。だしの素は、調理の前段にあってぐらぐらと煮立つ熱湯の中に投入され、頃合をみて跡形も無く取り去られます。甘みエキスだけが鍋に残り、あらためて作り上げる調理品の中に深く浸み渡っていくのです。煮干にしろ、昆布にしろ、取り去られるという調理方法は、和食独自の澄んだ香りと味、彩りを演出する技です。わが国は四方を海原に囲まれています。和食の代表的なだしは、全てこの海原からの恵みです。われわれの祖先は、生活の知恵としてこの海原の中に味のベースを見つけ、里の恵みに彩を添える食文化を完成させました。そういう側面からもわが国は海洋国なのです。

出汁学講座(ダシについて学ぶ)
●第一は 煮干
煮干の原料の多くはカタクチイワシで作ったものが最も一般的です。長崎県が日本最大の生産地となっています。また、マイワシ、ウルメイワシ、キビナゴ、アジ、サバ、トビウオ(あご)などを原料としたものもあり地方の味に深みを与えています。【栄養成分】DHA、EPA、ビタミンB2やD、カルシウムが豊富で、体にいい成分がいっぱいつまっています。
【出汁の取り方】
水出と煮出があり、水出しの方が雑味の少ない良質の出汁が取れます。頭と腹わたからは苦味や雑味が出るので下拵えとして取り除きます。出汁が出やすいように、中骨に沿って2枚下ろしのように指で二つにおります。出汁を取った後に焼け火箸を入れると生臭みの元になっている成分が揮発し、上品な出汁になるといわれています。出汁をとった後の煮干は出し殻として取り出します。
・水出: 1L程度の水に50gほどの煮干を入れて一晩(10時間程度)出汁を取ります。煮干を取り出した後に出汁を加熱して用います。布巾で更に濾す料理人もいます。
・煮出: 1L程度の水に30gほどの煮干を入れて10分程度煮出す。やはり煮干は出汁から取り出します。


●次は鰹節    カツオは縦じま
(尾を持って吊るしてみます)        
鰹節はマガツオを原料にし、煮熟後、焙乾、カビつけを行って仕上げたものです。鰹節といえばイノシン酸、イノシン酸といえば鰹節。そう呼ばれるくらい、今やイノシン酸は、鰹節の代名詞になっています。イノシン酸は大正時代の初め、鰹節のだしの成分を研究する間に抽出分離されました。核酸系の物質のイノシン酸が塩基性アミノ酸のヒスチジンと結びつき、それが鰹節の独特のうま味をつくりだしていると発表したので有名になりました。しかし、鰹節に含まれたイノシン酸の量にかなりばらつきがあり、イノシン酸の量と鰹節のおいしさとは無関係という結論になっています。グルタミン酸のようなうま味アミノ酸に作用して、うま味を発揮することが働きです。イノシン酸はグルタミン酸などのうま味アミノ酸の引き立て役です。
★ 鰹節の作り方(有用なカビを利用した食品です)
 新鮮な鰹を三枚に下ろし、そのうちの二枚を「節」と云い、この節を煮篭に入れて一度煮ます。これを冷まして身を引き締めたものがいわゆる「なまり節」で、なまり節を骨抜きし、底が簀の子になっている木の箱にいれて重ね、下から薪を焚いて、7-10日間燻します。この工程を「焙乾(ばいかん)」と言い、こうすると表面は燻製になりますが、中には未だ水分が残っています。
この後にカビの一種である鰹節菌類(アスペルギルス・ガラウカスやアスペルギルス・レペンス)を表面につけカビを発育させます。こうすると鰹節全体から水分がどんどん失われていきます。このようなカビ付けと熟成を
3-5回程度繰り返し内部を乾燥させて行く訳
です。出しの取り方のコツとしては、少し多い目に使用し、ぐつぐつ煮込みすぎないことです

●最後に昆布寒流で鍛えられる甘みの秘訣昆布の国内生産量は、ほとんどが北海道から採取されており。全体のほぼ95%に相当します。青森、岩手、宮城県の東北3県では5%前後となっています。昆布は暖流の海域では育ちません。昆布は、日本では14属45種あり、全世界では、北半球に26属、南半球に9属生育しています。寒流系の褐藻類である昆布は、日本では宮城県以北の太平洋岸と北海道全域に分布し、とくに北海道が主産地となります。その甘みの秘訣は、昆布のグルタミン酸で、イノシン酸と合わせて食べると『うまみの相乗効果』により、更においしいと強く感じるようです。
ダシの取り方について

上記の写真は、株式会社カネソ22 さんのご了解をもとに掲載いたしました。詳しくは、引用ホームページまでhttp://www.kaneso22.co.jp/dashitori/awasedashi.html1)昆布の表面を、固く絞った布巾でさっとふいてください。(水洗いはしないでください。)2)鍋に水と昆布をいれ、中火にかけてください。3)約10分かけてだしを沸騰させ爪がたつくらいの固さになったら昆布を取り出します4)澄んだ出汁ほど和食には役立つ 注意 長時間昆布を水に浸し、煮てしまうと水の中にぬるぬるした成分や海藻の臭みなどが溶け出し、風味が損なわれてしまいます。火を付けたら気を抜いてはなりません。   三種類の出汁をうまく使い分けましょう、昆布とカツオ、煮干と昆布・・・・忙しいときは瓶詰ダシも上手に使い分けましょう。 ダシひとつ、されどダシは奥深し。

2006年12月1日金曜日

塩辛はいかが

あっという間に秋本番、アフター5といえば外もうっすら暗くなり日本酒の美味しい季節となりました。日本酒といえば和食の肴、わが国には数多くの酒の肴、珍味といわれるものがあります。今回は塩辛について調べてみました。書いていながらもうたまりません。 塩辛の発酵は、魚介類自身の持つタンパク質分解酵素、麹入りの塩辛であれば麹の持つ酵素や細菌類の酵素によって進みます。
これらの酵素の作用でタンパク質は分解されペプチド、アミノ酸(タウリン、アルギニン、プロリンなど)となり、発酵中に乳酸や有機塩基が生成され独特のうま味が醸成されるようになります。
塩辛の細菌叢(フローラ)の研究によればStaphylococcus属(黄色ブドウ球菌以外)で形成されているといわれますが、耐塩菌を考慮した分離方法や嫌気度の研究が十分に行われれば、更に新事実も確認されるのではと思っています。
自分でも作ってみましょう  簡単な塩辛の作り方
①新鮮なイカ(刺身用のイカを使用してください。図1
②まず、胴体はイカの刺身として作ります。イカの塩辛としては耳(外套三角形の部分)と足を使用します。刺身を作る際に内臓(ワタ)を取り外します。図2      

③足から吸盤を包丁の先を使ってはずします。耳と足を適当な大きさと長さに切ります。 
④目の近くは硬いので使わないほうが良いでしょう。 
⑤内臓からワタをスプーンで取り出しイカと合わせ塩を適量小さじ1杯程度加え混ぜます。 
⑥ワタ袋の横に墨袋が見える場合には、入れると黒作りの塩辛になります。 
⑦蓋つきの瓶にいれて蓋をし、冷蔵庫で2-3日程度おけば出来上がりです。 
●作り方に自信が出てきたら、好みに合わせ日本酒や鷹の爪を使い深みを添えてください。
市販品は①塩辛いか②薄塩か
①伝統的な製法にこだわる桃屋さんのお話:「いか塩辛」は昭和27年の発売以来、伝統的製法を維持 しており、保存料を使用せず、常温保存できるように仕上げてあります。生のいかを塩辛として保存するため、塩分は17%です。函館産のスルメイカのみを使用し、じっくりと樽で熟成させ、塩分で素材の旨みを引き出した本格的な「いか塩辛」でお客様の支持をいただいております。・ラベル に「保存料を使用せずに品質を維持するにはこの塩分(約17%)が必要です。主にお茶漬けにてお召し上がり頂き、又、食べ過ぎにはご注意下さい。」と表示してあります。
ご参考ですが、海水の塩分は約3~4%ですので、その5~6倍の塩辛さとなります。上記のように昔からのファンが多数いらっしゃいます。また、伝統的製法を継続、維持して参りますので、ご理解賜りますようお願い申し上げます。とある。(桃屋のホームページ Q&A http://www.momoya.co.jp/ より引用)常温で瓶詰販売するにはこの塩分が必要です。製法にこだわり、味にこだわろうとすれば当然こうした製法となります。
②一方、最近では低塩分嗜好の消費者が増えているため4~7%の新製法の塩辛が多く出回っています。ただし、日持ちが短いので、ほとんどが冷蔵品で防腐剤を使用したり、水分活性を調整し品質を保持しています。確かに塩辛ですが伝統的な塩だけで作りあげる塩辛とは違います。
塩辛を使った料理 
美味しい塩辛はそのままで十分堪能できますが調味料としても熱い視線が注がれています。
①「塩辛の入ったペペロンチーノは、ほんとにおいしいです」
②「塩辛のクリームスパゲティーをよく作るんですけれど、すごくおいしいですよ」まず、フライイパンにオリーブオイルを熱して塩辛をいためます。火がとおったら生クリームをいれるんです。
③「塩辛チャーハンは美味しいんですよ」塩辛の汁が深みのある味付けになります。ラードをキンキンに熱して、そこに塩辛と刻みネギをぶち込んで軽く炒め、ご飯を入れてパラパラに炒めるだけ。全然生臭くないです。
④インスタントで「韓流風味キムチ」が出来上がり。キムチに塩辛を混ぜれば出来上がり。単身赴任者の酒のつまみにどうぞ。⑤「塩辛いため最高です」単品でも野菜と一緒にいためても、よろしいと思います。

①シンプル ②生クリーム ③塩辛入り焼き飯 ④本場韓国の高級キムチは魚介類が入っています。 ⑤オリーブオイルで塩辛を軽くいためます。野菜炒めでも良いでしょう。

2006年11月28日火曜日

うどん Udon


この夏 日本のソウル・フード(うどん)が東宝映画で上映(8.24)された。
うどんUdon この夏 日本のソウル・フード(うどん)が東宝映画で上映(8.24)された フィルムは、一人の田舎青年、松井香助がビックドリームを目指してNew Yorkに出るが、夢破れて失意の中、借金まで背負って故郷の讃岐に帰ってくるところから始まります。腹を減らして親父の打つ饂飩を食べようとしたとき、親父から逃げ戻ってきたようなやつに食わせる饂飩は、うちにはねえ!(俺の饂飩はいつも真剣勝負だ)と打ちのめされるのです。借金返済のために始めた編集の仕事で、うどんコラムが大当たりし、山道で発見する田舎のうどん屋と出会い、何時しかうどん屋の息子がうどん屋の大将へと歩み始め、本当の自分自身を発見してゆく漫画チックなストーリーでした。(左デザインはhttp://www.toho.co.jp/lineup/udon/より引用掲載)
「うどん」という食の分布
日本の麺分布を見てみると「東の蕎麦」に対して「西のうどん」という色分けになりますが、とりわけ「うどん」は、それぞれの郷土で独自な麺と料理法を伝えています。特徴のあるうどんとしては、関西うどん・きしめん・素麺・ほうとう・うーめん・讃岐うどん・伊勢うどん等数々。

うどんの材料
小麦粉の質は、うどんにとって非常に重要です。タンパク質の含有量の違いから大きく分けて、強力粉、中力粉、薄力粉の三種類があります。タンパク質は、こねたときのグルテンの生地と関係が深く、タンパク質の多い粉ほど、麺の弾力(こし)が強くなります。一般に、細い麺や、平たい「きしめん」のようなものには強力粉を使い、太目の麺や、さくさくした感触の麺には、中力粉を使用します。日本産の小麦粉は中力粉なのでうどん製造には適していますが生産量が少ない。そこで、強力粉と薄力粉とを配合して、色々な弾力や粘性を持つ麺を作ったりします。小麦粉は、そば粉とは違って、少し熟成させたほうが良いようです。挽きたてのものよりは、最低でも一ヶ月程度寝かせたものを使います。その理由については科学的には、まだ解明されていません。小麦粉は温度変化が少ない状態で保存します。保存温度が高温になると小麦粉中の脂肪が酸化して異臭の原因やタンパク質が変性して、こねた時に期待した質感が出ません。うどんづくりに塩は欠かせません。塩は小麦粉と相まってグルテンの形成を促進させます。弾力を持った生地を作るのには欠かせない素材です。
弘法大師は讃岐のひと
四国に深く関わる食材や歴史上の人物を調べるうちに、弘法大師に関する興味ある事実がわかってきました。大師は四国を布教しながら、人々の暮らしをつぶさに観察し、農業や産業を振興し、産物や食の加工技術を伝授伝播したようです。
信仰を広めるためには信頼が必要です。生活への鋭い観察力は自然や地形・希少鉱物の研究までに及んでいます。温泉、銅・水銀鉱など大師が発見したと伝えられるものは数多く記録されています。一般には真言密教の伝達者、書の達人と伝わりますが、その人となりの全体像からは、西洋のダビンチに匹敵する実践マルチ科学者として評価することが正しいと思います。
弘法大師は、仏教を研究するために9世紀の初め頃に中国に渡り、その後帰し四国を拠点に活動します。讃岐を遍路したとき良質な讃岐小麦を見つけるや、中国で食されていた小麦団子をアレンジ、スープ加えることを研究して現在の讃岐うどんのルーツを考案したようです。この美味しい知識を讃岐地方の農民に伝授したのが讃岐うどんの始まりです。うどんは食の中心になり、食するものが自ら味付けする、讃岐うどんは食べるスタイルまでも守り通されているのです。


東京都全体のマクドナルドの総店舗数より、日本で一番小さい県である香川県のうどん屋の数の方が多いのです。うどんは小麦と塩と水で練っただけですが、その味の決め手は、昔ながらのうどん職人たちの知恵と勘です。古びた一軒家の佇まいに絶妙な味と驚きが潜んでいます。

関東にもある民家に潜む「うどん」 
私の故郷は近頃うどんで注目されています。富士吉田市役所のホームページで確認しないとどこに店(ありか)があるかなかなかわかりません。正確な店の数は不明で100とも200とも300軒ともいわれます。人口はつい最近まで4万人程度の小さな街で饂飩開業店対人口比率は高率です。

【白須】一見すると一般住宅と思ってしまいます。看板もないし暖簾もありませんでも味は絶品
ぜひ1度アドベンチャーしてください   一杯300円  営業時間 11:30-14:00  日曜はお休み   (上記写真は富士吉田市役所の公開ホームページより引用掲載) 

2006年11月27日月曜日

当世野菜栽培事情

(農産物遺伝子操作、ハウス栽培技術、農薬の進歩など)
前号では野菜が野生の性状を失い、人の食物として必要な要件を兼ね備えた食べ物であることを述べました。穀物を初めとして劇的に品種改良が進歩したのはまだ一世紀に満たない時間です。
しかも優良品種の発見は、近縁種の交配による偶発的な結果としての成果の積み重ねでした。
科学の進歩は農業技術にも多大な影響を与えています。たとえばバイオテクノロジーの原点となるワトソン・クリックのDNA二重らせん構造の決定は1953年。生物の形質が遺伝子によって決定されることが分子生物学的に認められた年です。
その30年後にはシータス社のキャリー・マリスがDNAポリメラーゼを使ったDNA合成原理法(PCR)を発表しました。この世紀最大の発見は幅広く産業界に革命をもたらすこととなります。1967年には、アポロ11号の月面着陸。航空宇宙技術の成果は環境制御やIC技術に大きく貢献しました。
また化学農薬の始まりはガイギー社のミュラーのDDT発明で1938年より始まり、除草や害虫駆除作業が簡略化されると生産量は飛躍的に増産しました。現代科学技術の発展は、農業の技術や方式までも大きく変化させています。

  DNA分子モデル

品種改良は、バイオテクノロジーの進歩により近縁種交配にたよる表現遺伝子の選択処方から目的とする遺伝子の組み換えという時代へと変化しました。この技術を使うと近縁種の交配に頼っていた種の制限が全く無くなります。たとえば糖尿病に悩む患者さん用にインシュリンを供給するために大豆にインシュリン産生遺伝子を組み込むことで、インシュリンを大量に含む大豆を提供することが可能となります。医療や医薬品製造技術での応用は多くの方々の賛同を受けやすいのですが、これが食料となると少し事情が変わってまいります。
GMO(遺伝子組み換え農産物)の登場
品種改良技術によれば、より多くの収量が期待でき、より寒冷地でも生育できるもの、さらに消費者の好みに近づけた品種(苦味・臭いを抑える/甘みや・香りを増す)が可能です。
GM技術は農薬に耐性となった遺伝子を本来の遺伝子に組み込んで、農薬を撒いてもかれない植物を作り出したり、害虫の体内で呼吸のメカニズムを阻害する酵素を新たに植物体に作らせるようなことが可能な遺伝子操作技術です。これまで人類が手にしなかった植物の形をしたある種の人工物です。GMOが進んでいるアメリカでは,トウモロコシの4割弱,ダイズの6割弱,綿花の6割強がGMO作物だといわれています。日本は大豆の90%をアメリカから輸入しています。
ただし、国内では一般農家がGMOを栽培しているということは表向きにはないことになっています。試験所レベルの研究栽培が現状ですが、各地でGMOの自生が確認されたとニュースになることがあります。EUのドイツ政府は、私達の食生活に大きな影響を与える決定しました。
ドイツでは、これまで、いわゆる遺伝子組み換え(GM)農産物の栽培は、研究目的に限られていましたが、政府は、初めてGM農産物を商業目的で栽培すること可能にするための決定を2004年に行ったのです。日本も将来的には可能性が高いと思われます。
ハウス栽培技術の進歩
農産品のうち穀物や野菜は、収量や品質が天候に大きく左右されます。日照時間、温度、積算温度、降水量、台風の通過などです。これに対して自然環境を限りなく排除しようとすることが試みられ、結果としてビニールハウスや屋内栽培技術、土に頼らない水耕栽培技術などが確立され始めています。栽培土壌を研究し、生育環境を最適にコントロールする。環境制御は電子制御で
温度・照明・水・二酸化炭素濃度をコントロールするそういう植物生産工場・基地が作られ始めています。コスト高がもっぱらの問題ですが、農業の株式会社としての制度と大規模化は将来への光です。


  野菜工場          システム管理         農薬による死亡者数

農薬の功罪
化学農薬の発明と大量製造技術および抗生物質の発見開発は、人が生きてゆくうえで真に大きな原動力となりました。しかし初期にあっては使用方法や毒性の正確な評価がなされないままに多くの事故を起こすこともあり、毒薬としての印象を強く与えてしまったことも事実です。特に農薬は一般の農作業者が実務に使用しますので、適正な管理・使用方法が重要です。さらに全世界からさまざまな食品輸入がなされ、一部開発途上国や輸入国の国情の違いから、既に日本では使用禁止となっている毒性の強い農薬が検疫で検出されることで消費者は時々不安にさらされます。
 全体的には法律で規制されている抗生物質や農薬は食べ物から検出されるべきではありませんが、現在の最先端科学技術の結果として生まれている農薬は、非常にナチュラルで毒性は人間に対して限りなく弱いということも知っておく必要があります。

消費者への情報開示がもっとも重要
1950年から1996年にかけて、世界の穀物生産量はほぼ3倍に増えましたが、それ以降伸びは止まってしまっています。過去4年間、毎年生産量は消費量に足りず、在庫を切り崩さなければなりませんでした。この原因は、環境破壊や温暖化による耕地の砂漠化と耕作地としてはほぼ利用すべき平地が利用されつくしたと考えられるからです。世界の人口は、現在約63億人で、世界の穀物生産量はおよそ19億トンです。1人当たり1日に最低限必要な穀物の量は457g(年間167kg)と言われてます。
 穀物を動物資料として家畜に与えている事実もありますが、現に途上国の1割近い人たちは毎日飢餓に直面しています。日本では、たんぱく質自給率は40%ぎりぎりで多くを輸入に頼っています。中国・インドなどが消費大国に転向したら、世界の穀物畑である米国などが異常気象で収穫が減ったりしたら、途端に日本は深刻な食糧不足に直面します。 単純に無農薬が良いという偏見も危険です。世の中は急激に変化しているのですから生産者販売者は、農薬の使用の事実と残留農薬を調べ、素性を表記すること。GMOも消費者が選択できるようにもっとはっきりと使用・不使用を明示し、コストに反映させればより現実的になります。産地を明示することで付加価値がつくならば正しく表示して高く売ったらいかがでしょうか。