2006年11月28日火曜日

うどん Udon


この夏 日本のソウル・フード(うどん)が東宝映画で上映(8.24)された。
うどんUdon この夏 日本のソウル・フード(うどん)が東宝映画で上映(8.24)された フィルムは、一人の田舎青年、松井香助がビックドリームを目指してNew Yorkに出るが、夢破れて失意の中、借金まで背負って故郷の讃岐に帰ってくるところから始まります。腹を減らして親父の打つ饂飩を食べようとしたとき、親父から逃げ戻ってきたようなやつに食わせる饂飩は、うちにはねえ!(俺の饂飩はいつも真剣勝負だ)と打ちのめされるのです。借金返済のために始めた編集の仕事で、うどんコラムが大当たりし、山道で発見する田舎のうどん屋と出会い、何時しかうどん屋の息子がうどん屋の大将へと歩み始め、本当の自分自身を発見してゆく漫画チックなストーリーでした。(左デザインはhttp://www.toho.co.jp/lineup/udon/より引用掲載)
「うどん」という食の分布
日本の麺分布を見てみると「東の蕎麦」に対して「西のうどん」という色分けになりますが、とりわけ「うどん」は、それぞれの郷土で独自な麺と料理法を伝えています。特徴のあるうどんとしては、関西うどん・きしめん・素麺・ほうとう・うーめん・讃岐うどん・伊勢うどん等数々。

うどんの材料
小麦粉の質は、うどんにとって非常に重要です。タンパク質の含有量の違いから大きく分けて、強力粉、中力粉、薄力粉の三種類があります。タンパク質は、こねたときのグルテンの生地と関係が深く、タンパク質の多い粉ほど、麺の弾力(こし)が強くなります。一般に、細い麺や、平たい「きしめん」のようなものには強力粉を使い、太目の麺や、さくさくした感触の麺には、中力粉を使用します。日本産の小麦粉は中力粉なのでうどん製造には適していますが生産量が少ない。そこで、強力粉と薄力粉とを配合して、色々な弾力や粘性を持つ麺を作ったりします。小麦粉は、そば粉とは違って、少し熟成させたほうが良いようです。挽きたてのものよりは、最低でも一ヶ月程度寝かせたものを使います。その理由については科学的には、まだ解明されていません。小麦粉は温度変化が少ない状態で保存します。保存温度が高温になると小麦粉中の脂肪が酸化して異臭の原因やタンパク質が変性して、こねた時に期待した質感が出ません。うどんづくりに塩は欠かせません。塩は小麦粉と相まってグルテンの形成を促進させます。弾力を持った生地を作るのには欠かせない素材です。
弘法大師は讃岐のひと
四国に深く関わる食材や歴史上の人物を調べるうちに、弘法大師に関する興味ある事実がわかってきました。大師は四国を布教しながら、人々の暮らしをつぶさに観察し、農業や産業を振興し、産物や食の加工技術を伝授伝播したようです。
信仰を広めるためには信頼が必要です。生活への鋭い観察力は自然や地形・希少鉱物の研究までに及んでいます。温泉、銅・水銀鉱など大師が発見したと伝えられるものは数多く記録されています。一般には真言密教の伝達者、書の達人と伝わりますが、その人となりの全体像からは、西洋のダビンチに匹敵する実践マルチ科学者として評価することが正しいと思います。
弘法大師は、仏教を研究するために9世紀の初め頃に中国に渡り、その後帰し四国を拠点に活動します。讃岐を遍路したとき良質な讃岐小麦を見つけるや、中国で食されていた小麦団子をアレンジ、スープ加えることを研究して現在の讃岐うどんのルーツを考案したようです。この美味しい知識を讃岐地方の農民に伝授したのが讃岐うどんの始まりです。うどんは食の中心になり、食するものが自ら味付けする、讃岐うどんは食べるスタイルまでも守り通されているのです。


東京都全体のマクドナルドの総店舗数より、日本で一番小さい県である香川県のうどん屋の数の方が多いのです。うどんは小麦と塩と水で練っただけですが、その味の決め手は、昔ながらのうどん職人たちの知恵と勘です。古びた一軒家の佇まいに絶妙な味と驚きが潜んでいます。

関東にもある民家に潜む「うどん」 
私の故郷は近頃うどんで注目されています。富士吉田市役所のホームページで確認しないとどこに店(ありか)があるかなかなかわかりません。正確な店の数は不明で100とも200とも300軒ともいわれます。人口はつい最近まで4万人程度の小さな街で饂飩開業店対人口比率は高率です。

【白須】一見すると一般住宅と思ってしまいます。看板もないし暖簾もありませんでも味は絶品
ぜひ1度アドベンチャーしてください   一杯300円  営業時間 11:30-14:00  日曜はお休み   (上記写真は富士吉田市役所の公開ホームページより引用掲載) 

2006年11月27日月曜日

当世野菜栽培事情

(農産物遺伝子操作、ハウス栽培技術、農薬の進歩など)
前号では野菜が野生の性状を失い、人の食物として必要な要件を兼ね備えた食べ物であることを述べました。穀物を初めとして劇的に品種改良が進歩したのはまだ一世紀に満たない時間です。
しかも優良品種の発見は、近縁種の交配による偶発的な結果としての成果の積み重ねでした。
科学の進歩は農業技術にも多大な影響を与えています。たとえばバイオテクノロジーの原点となるワトソン・クリックのDNA二重らせん構造の決定は1953年。生物の形質が遺伝子によって決定されることが分子生物学的に認められた年です。
その30年後にはシータス社のキャリー・マリスがDNAポリメラーゼを使ったDNA合成原理法(PCR)を発表しました。この世紀最大の発見は幅広く産業界に革命をもたらすこととなります。1967年には、アポロ11号の月面着陸。航空宇宙技術の成果は環境制御やIC技術に大きく貢献しました。
また化学農薬の始まりはガイギー社のミュラーのDDT発明で1938年より始まり、除草や害虫駆除作業が簡略化されると生産量は飛躍的に増産しました。現代科学技術の発展は、農業の技術や方式までも大きく変化させています。

  DNA分子モデル

品種改良は、バイオテクノロジーの進歩により近縁種交配にたよる表現遺伝子の選択処方から目的とする遺伝子の組み換えという時代へと変化しました。この技術を使うと近縁種の交配に頼っていた種の制限が全く無くなります。たとえば糖尿病に悩む患者さん用にインシュリンを供給するために大豆にインシュリン産生遺伝子を組み込むことで、インシュリンを大量に含む大豆を提供することが可能となります。医療や医薬品製造技術での応用は多くの方々の賛同を受けやすいのですが、これが食料となると少し事情が変わってまいります。
GMO(遺伝子組み換え農産物)の登場
品種改良技術によれば、より多くの収量が期待でき、より寒冷地でも生育できるもの、さらに消費者の好みに近づけた品種(苦味・臭いを抑える/甘みや・香りを増す)が可能です。
GM技術は農薬に耐性となった遺伝子を本来の遺伝子に組み込んで、農薬を撒いてもかれない植物を作り出したり、害虫の体内で呼吸のメカニズムを阻害する酵素を新たに植物体に作らせるようなことが可能な遺伝子操作技術です。これまで人類が手にしなかった植物の形をしたある種の人工物です。GMOが進んでいるアメリカでは,トウモロコシの4割弱,ダイズの6割弱,綿花の6割強がGMO作物だといわれています。日本は大豆の90%をアメリカから輸入しています。
ただし、国内では一般農家がGMOを栽培しているということは表向きにはないことになっています。試験所レベルの研究栽培が現状ですが、各地でGMOの自生が確認されたとニュースになることがあります。EUのドイツ政府は、私達の食生活に大きな影響を与える決定しました。
ドイツでは、これまで、いわゆる遺伝子組み換え(GM)農産物の栽培は、研究目的に限られていましたが、政府は、初めてGM農産物を商業目的で栽培すること可能にするための決定を2004年に行ったのです。日本も将来的には可能性が高いと思われます。
ハウス栽培技術の進歩
農産品のうち穀物や野菜は、収量や品質が天候に大きく左右されます。日照時間、温度、積算温度、降水量、台風の通過などです。これに対して自然環境を限りなく排除しようとすることが試みられ、結果としてビニールハウスや屋内栽培技術、土に頼らない水耕栽培技術などが確立され始めています。栽培土壌を研究し、生育環境を最適にコントロールする。環境制御は電子制御で
温度・照明・水・二酸化炭素濃度をコントロールするそういう植物生産工場・基地が作られ始めています。コスト高がもっぱらの問題ですが、農業の株式会社としての制度と大規模化は将来への光です。


  野菜工場          システム管理         農薬による死亡者数

農薬の功罪
化学農薬の発明と大量製造技術および抗生物質の発見開発は、人が生きてゆくうえで真に大きな原動力となりました。しかし初期にあっては使用方法や毒性の正確な評価がなされないままに多くの事故を起こすこともあり、毒薬としての印象を強く与えてしまったことも事実です。特に農薬は一般の農作業者が実務に使用しますので、適正な管理・使用方法が重要です。さらに全世界からさまざまな食品輸入がなされ、一部開発途上国や輸入国の国情の違いから、既に日本では使用禁止となっている毒性の強い農薬が検疫で検出されることで消費者は時々不安にさらされます。
 全体的には法律で規制されている抗生物質や農薬は食べ物から検出されるべきではありませんが、現在の最先端科学技術の結果として生まれている農薬は、非常にナチュラルで毒性は人間に対して限りなく弱いということも知っておく必要があります。

消費者への情報開示がもっとも重要
1950年から1996年にかけて、世界の穀物生産量はほぼ3倍に増えましたが、それ以降伸びは止まってしまっています。過去4年間、毎年生産量は消費量に足りず、在庫を切り崩さなければなりませんでした。この原因は、環境破壊や温暖化による耕地の砂漠化と耕作地としてはほぼ利用すべき平地が利用されつくしたと考えられるからです。世界の人口は、現在約63億人で、世界の穀物生産量はおよそ19億トンです。1人当たり1日に最低限必要な穀物の量は457g(年間167kg)と言われてます。
 穀物を動物資料として家畜に与えている事実もありますが、現に途上国の1割近い人たちは毎日飢餓に直面しています。日本では、たんぱく質自給率は40%ぎりぎりで多くを輸入に頼っています。中国・インドなどが消費大国に転向したら、世界の穀物畑である米国などが異常気象で収穫が減ったりしたら、途端に日本は深刻な食糧不足に直面します。 単純に無農薬が良いという偏見も危険です。世の中は急激に変化しているのですから生産者販売者は、農薬の使用の事実と残留農薬を調べ、素性を表記すること。GMOも消費者が選択できるようにもっとはっきりと使用・不使用を明示し、コストに反映させればより現実的になります。産地を明示することで付加価値がつくならば正しく表示して高く売ったらいかがでしょうか。

2006年11月24日金曜日

野菜と野草の違い

道端には色々な植物が生い茂っている。なんて美味しそうな草だろう思うのは私だけだろうか実はわたくし羊なんです。一口噛み切ろうと前足を伸ばせど伸ばせど・・・・。ふと目が覚めてはたと我に返る。あー夢か、自然と伸びたコーヒーカップの先には色とりどりに盛付けられたサラダがあった。

皆さんはサラダを作る時にどのような野菜を使われますか。トマト、キャベツ、きゅうり、ほうれん草、水菜、サラダ菜、オクラ、かぼちゃ、ポテト、りんご、アボカド・・・・。一般的には、八百屋さんやスーパーマーケットなどで売られている野菜(果実も混ぜて)で作りますね。私もそうです。
では何故、道端に生えている植物を使ってサラダを作らないのでしょうか。都会ではそんな草もないので作れないからでしょうか。ならば田舎にすむ人は、日々草を食べているのでしょうか。誰もこんな質問など思いも巡らしませんよね。ほとんどの日本人は地域を問わず草は食べません。

人はなぜ野草を食べないのか、食べられないのか整理してみました。
1. 食べたことがなく美味しさが不明である。(経験のない食べ物は食べたくないという習性)
2.美味しくなさそうである(葉肉のうすい植物は青臭いだけで食べられない)
3.毒性もあり食べられないものもある(毒草、アク、アルカロイド色素)
4. まれには食べられるものもあるが単一には自生していない
5. 道端に生えているものは安全とは言いがたい6. ほかに食べるものはいろいろあるので、好んで食べる必要がない。
7. 年中同じところに同じ状態(旬)では自生していない。
以上の事柄が現代人をして野草(道端や野原に自生)を常食としていない理由と考えられます。

     (野草 シャク        水辺の雑草        野草 鉄砲草) 
実はこの整理こそが野菜の誕生への道と考えたのです。
ちょっと大げさですが野菜と野草の違いのヒントがこの中に隠れていました。 

野菜の条件 
1. 野菜とは常食するのにふさわしい美味しさが分かっていること。
2. 美味しくて可食部が大きいこと。
3. 人には害とならないもの。
4. 単一種として栽培が可能なものであること、継続的に栽培できること。
5. 人為的に管理ができ栽培状況や安全性が保証できること。
6. 発芽時期が一定していて、収穫期も揃っていること。すなわち収穫がしやすいこと。
こうした条件がそろって初めて人に利用される野菜(植物)と呼べるのではないでしょうか
野菜をフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』で検索すると次のように表示されます。野菜(やさい)とは、一般には水分が多い草本性で食用となる植物を指す。青物ともいう。食用となる植物で、主に地下茎)、甘くないを食べるものを野菜ということが多い。

ニンジンで検証
ニンジンのルーツと野菜までの道のりニンジンの原産地は、アフガニスタン周辺とされています。そこから、東西2つのルートに分かれて、日本に2系統のニンジンが渡来しました。元来は、黄、白、紫、赤など多彩で細長いのが特徴でした。日本ではオレンジ色の品種がほとんどですが、フランスでは紫色もよく出回っています。



ノラニンジンDaucus carotaニンジンの原種といわれていますが、根は細くて食べられません。左の写真の葉は、ニンジンの特徴を示しています アフガンの平原で根に養分を蓄えた比較的可食部の肥大化した原種は、品種の選択とともに日本にもたらされますが渡来当初は、食用というよりは薬用で重用されています。 現在のニンジンは30年ほど前のニンジン臭いものとはかなり変わっていて皮も薄く、甘味も格段に濃くなっています。
植物の防衛機能
野菜は動物と違って自ら防衛や繁殖のために動くことが出来ません。したがって種を保持するためには動物に食べられたり、一時的な気象変化に大きく影響を受けないための防御機能が必要です。この特徴こそ野生種である野草の特徴です。もし発芽や開花、結実時期が同時期ならば、気象変化が直接影響し、降雨がなければ一瞬にしてその地区の種は滅びます。また、動物にこのまれる美味しさならば、たちどころに食べつくされてしまいます。植物がもつ自己防衛物質(アルカロイド、フェノール、有機酸、ステロイド、シアン配糖体)は動物による披食を制限します。 

野草が野菜になる道のり
野原で見つけた食べられそうな野草をすぐに野菜にすることは出来ません。おそらく何百年もかかって食べやすい形に品種を改良した末の代物なのです。しかしこれからは優秀な植物の遺伝子を世界中が競って、試験管内で改良し数年間で野菜を生産する時代が来ることでしょう。 次回は、大量に必要とされる食物をどのように世界が確保しようとしているかを検証しようと予定しています。ご期待ください。(農産物遺伝子操作、ハウス栽培技術、農薬の進歩など)